「石山寺と湖南の仏像」の仏像紹介 第3回

otsu-rekihaku

2008年07月01日 17:33

石山寺と湖南の仏像展の作品紹介の第3回は、銅造観音菩薩立像です。本像は比叡山の麓の天台宗寺院に伝世したもので、比叡山関連では珍しい金銅仏です。

実はこのお像については少し困ったことになっていまして、はたしていつ造られたのか意見が分かれているのです。今までは、奈良時代の像をモデルとして、鎌倉時代に造られた像として紹介されてきたのですが、そんな回りくどい考えではなく、そもそも奈良時代の造立ではないか(しかも前期)、ということなのです。
 私たち美術史家は、時に千年以上も前の作品に対して、あたかもその時、自分が生きていたかのように親しみをこめて、観てすぐに年代を判定します。圧巻なのは、十年単位(たまに1,2年)で編年をするときさえあります。その場に居合わせた一般の方は、マジックを見ているようにみえるようで、「なぜ判るのか」とよくきかれるのですが、様々な情報と判断で総合的にきめていくという、一般の人には真似の出来ない職人芸なわけです。
 さて、魔法のように年代を決めていく我々も、たまに(実は結構頻繁に)研究者同士で年代がずれることがあるのです。まさにそれは、美術史が科学であるということの証拠だと私はポジティブに考えているのですが、今回の像もそのような、研究者を悩ませるお像のようです。
 とはいえ、悩ましく難しいお像であればあるほど、我々は本能的に楽しんでしまうわけであり、時に日替わりで年代がかわることもあり、それがお酒の肴になったりもするのです。しつこくこってりとねっちょりと、長時間かけてまさに嘗め回し、そしてそれの繰り返しにより、あらゆる角度の映像と質感と、重量、風味、全ての五感を使ってその作品が持っている情報をキャッチするのです。そしてその上での本人なりの結論を出すのです。
 みなさんも学芸員のキャプションをただ鵜呑みにするのではなく、展示している仏像をしっかりじっくりと見ていただき、年代判定の論争にぜひとも参戦していただきたく思います。(てらしま)




関連記事