常設展示室で、珍しい宋代の羅漢図を紹介中

otsu-rekihaku

2017年03月12日 15:09

 
近年、大津市ゆかりの収集家から歴史博物館にご寄託いただいた宋代の十六羅漢図を、現在、常設展示室で好評展示中です
 モノクロ基調の作品は、一見すると、拓本にみえますが、線刻部分やベタの摺り出し面に石碑の質感がみられないので、羅漢の図様を陰刻した版木に、紙を貼って取拓した拓版画と思われます
 また、拓本では出来ない技法として、墨を濃くのせている部分と薄くのせている部分でコントラストを表現した取拓をみせています
 ちなみに、第八尊者には落款があり、『図画見聞誌』において「仏道(仏教と道教の)人物を描くにたくみにして、特に精妙を為す」とたたえられた「長沙(現湖南省)の武洞清」が原画を手掛けたことが判明します
 表装のために、落款部分の一部が切り取られてしまってますが、「長沙武洞清」の上の文言が「祥符壬子」と読めるため、北宋代の元号・大中祥符の期間で、かつ壬子の年、すなわち1012年に原画が描かれていますほぼ千年前ですねえ
 洞清の描く羅漢は、李龍珉様というスタイルの一種とされていますが、とりわけ、羅漢図の姿や背景は、中国の南宋(1127‐1279)の作とされ高台寺に伝来する十六羅漢図(重文)と一致します。高台寺本には作者の落款がないことを考えると、北宋代の武洞清の原画、もしくは本作同様の拓版画を南宋代に写したものが高台寺本であるという推測もできます。その点でも、本作は貴重な拓版画十六羅漢図といえます

 なお、あわせて、中心的な羅漢を取り囲んで参集する十六羅漢を描いた珍しい図像の、南宋もしくは南宋画写しの作品もあわせて展示いたします
(ヨコヤ)















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