「戦争と大津」展 教育勅語・御真影・奉安殿

2014年08月31日

 戦時中に学生生活を送った方々は、授業中に「教育勅語」を丸暗記させられた経験をお持ちで、今もその一説は覚えておられる。この「教育勅語」は、尋常小学校(国民学校初等科)の「修身」の教科書に載せられており、4年生になったら暗唱させられたようです。

  朕惟ふに我が皇祖皇宗、国を肇むること宏遠に
  徳を樹つること深厚なり、我が臣民克く忠に、克く孝に、
  億兆心を一にして、世々厥の美を済せるは、
  此れ我が国体の精華にして、教育の淵源、亦実に此に存す、
  爾臣民、父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和し、
  朋友相信じ、恭倹己れを持し、博愛衆に及ぼし・・・

  ちんおもうにわがこうそこうそう、くにをはじむることこうえんに、
  とくをたつることしんこうなり、わがしんみんよくちゅうに、よくこうに、
  おくちょうこころをいつにして、よよそのびをなせるは、
  これわがこくたいのせいかにして、きょういくのえんげん、またじつにここにそんす、
  なんじしんみん、ふぼにこうに、けいていにゆうに、ふうふあいわし、
  ほうゆうあいしんじ、きょうけんおのれをじし、はくあいしゅうにおよぼし・・・

 本文の字数は315文字と、400字詰め原稿用紙なら1枚にも満たない分量でずか、難しい漢語がたくさん並ぶ漢字カタカナ交じり文は、子どもたちを閉口させたようです。最後の「御名御璽(ぎょめいぎょじ)」まで来ると終りになるので、皆ほっとしたという感想を、懐かしそうに語ってくださいます。

「戦争と大津」展 教育勅語・御真影・奉安殿
写真1 教育勅語の箱 上田上小学校蔵
 上の写真にある箱は、上田上小学校の講堂正面にあった奉安庫(奉安殿)の中から見つかったと、地元の方が話してくださいました。「勅語」と墨書きされた外箱と、麴の紋章の付いた漆塗りの内箱からなっていて、内箱の蓋を開けると、内部の両端にある軸受けの幅幅が約38cmありますので、その長さが、中に入っていたであろう「教育勅語」の軸の高さに該当するものと考えられます。
 ちなみに「教育勅語」は、戦後、GHQが日本に進駐してくると学校での奉読も行われなくなり、昭和23年には廃止されました。一方「御真影」は早く、昭和20年末には各学校から回収されたようです。

 この「教育勅語」は明治23年(1890)に発布され、天皇制教育の根幹をなす「教え」として普及が図られました。翌24年には、「御真影」(天皇・皇后の写真)とともに最重要視され、祝祭日の式典で、学校長による「教育勅語」の奉読、「御真影」の飾り方などが厳密に指示されました。
校長先生は、その日が来ると、モーニング姿の礼装に白手袋をはめ、校舎外にあった奉安殿から「教育勅語」と「御真影」を講堂に移し、勅語の奉読がうやうやしく行われたのです。生徒たちは45度の角度でお辞儀をし、途中で頭を上げようものなら、先生の竹鞭が飛んだといいます。
 校舎外の奉安殿の前では、登校・下校時に敬礼が義務づけられ、子どもたちは「少国民」として国を守る意識がうえつけられたのでした。

「戦争と大津」展 教育勅語・御真影・奉安殿
写真2 上田上小学校の奉安殿 上田上小学校蔵
(写真解説)同校の奉安殿は大正14年(1925)に完成しました。上の写真は、おそらく完成記念の式典風景を撮影したものと考えられます。

「戦争と大津」展 教育勅語・御真影・奉安殿
写真3 下阪本小学校講堂の奉安庫(奉安殿) 下阪本小学校蔵
(写真解説)講堂の正面に設けられた奉安庫で、祝祭日に御真影を飾り、その前で校長が「教育勅語」を奉読するために設けられました。別に「奉掲所」とも呼ばれています。

(館長・学芸員 樋爪)


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Posted by otsu-rekihaku at 08:46 │ 展覧会