企画展「車石」関連講座で日岡峠改修工事の全貌が明らかに

2012年03月26日

3月24日(土)、企画展「車石」の関連講座として、
「日岡峠の道路改修事業と木食正禅」と題した講演会を開催しました。
当日は、朝から雨模様でしたが、92名の方にご参加いただきましたkao_22
あらためて皆さんには御礼申し上げます。

講師には、奈良大学などで教鞭をとっておられる安田真紀子先生をお迎えしました。
先生は、街道関係の調査・研究を積極的に進めておられるとともに
NPOからくりおもちゃ塾奈良町副理事長も勤められるなど、
江戸時代の歴史を分かりやすく語られることで評判の先生ですkao01

企画展「車石」関連講座で日岡峠改修工事の全貌が明らかに
写真 講師の安田真紀子先生

安田先生は、平成2年、『奈良史学』第8号で
「東海道日岡峠における木食正禅の道路改修事業」という論文を発表されましたが、
当時、東海道京都・大津間の道路改修に関する実証的研究はほとんど進んでおらず、
この先生の論文が先駆的な研究として、当時注目を集めたことが、懐かしく思い出されます。

今回は、その論文で使用された資料などをもとに、享保から元文年間(18世紀前半)の工事について講演されました。
そのあらましを紹介すると、
改修工事を実施した京都東山安祥院の僧・木食正禅
そもそも工事を思い立ったのはなぜかiconN05
それは、重い荷物を車に積んで通行する牛の苦労を思いやってのことであったようで、
つまり動物愛護の精神が、その発端だったのです。
正禅は、工事費用を幕府に頼るのではなく、
みずから各地を勧進し、寄付を募ったということも紹介されました。
日岡峠改修以前にも、さまざまな勧進をしたようですが、
ある年には、上人の法話を聞こうと集まった人々で周辺は埋まり、
京都町奉行所から解散命令kao_16が出たといい、
また真如堂の金銅仏造立にむけての勧進では、
ハリボテで仏像のレプリカを作るなど、寄付する側の人々に理解しやすいような方法を取ったといます。
講演をお聞きしていると、かなりのカリスマ性を持った、しかもアイデアマンicon12のお坊さんだったことが分かります。

また工事を開始する以前に、さまざまな工法を立案しyubi_1
それが周辺の住民にどのような影響(迷惑)があるのか、そんなことも
頭に入れての模索を続け、
工事が無事完了してからは、
日岡峠に設けた庵に弟子を配置し、道路のメンテナンスにあたるという事にまで気を配っていたようです。
現代人の我々も、学ぶべき点がたくさんあるのではと思えてきます。
工事のお手本を、後世の人々に見せてくれているようだ、といっても過言ではないでしょうね。

さて、3月3日(土)から始まった企画展「車石」も、前半が過ぎ、
展示資料の一部を展示替えします。といっても、長くて一度にお見せできなかった
鳥羽海道絵図と、三条海道筋山科郷麁絵図について、それぞれ後半部分をご覧いただけるように場面替えをしますので、
こ興味のある方は是非ともご来館ください。お待ちしています。
                                  (担当学芸 O.H)


タグ :車石展

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Posted by otsu-rekihaku at 12:44 │ 展覧会 れきはく講座